「カギ」と「ハサミ」をもつウイルスたち
世界中で新型コロナウィルスが相変わらず猛威振るいとどまる気配がありません。
今後もまだまだこの状況は続くのではないでしょうか?これからウィルスとの長い戦いに
備え、そして今後の皆様の健康維持に対してぜひ一読お願いいたします。
実はウイルスは不潔なお口になればなるほど感染のリスクは上昇してしまいます。このことは
インフルエンザウィルスですでに証明されているのです。そしてウィルスは皆構造が類似しているため、どのウイルスに対しても以下の考え方が当てはまるでしょう。
では、インフルエンザウィルスを例にとってご説明しましょう。
むし歯や歯周病などのお口の清掃が不十分な人は、インフルエンザにかかりやすく重篤に
なってしまうことが証明されています。インフルエンザだけでなく、コロナやノロウイルス
風邪の各種ウイルスは皆構造が類似しているのは前術のとうりです。
ウイルスは、細胞にくっついて、そのなかに入り込んで生きる病原体です。まずはインフル
エンザウイルスの感染から発症までの仕組みをご説明しましょう。
鼻や口からからだに入り込んだウイルスは、鼻腔や咽頭などの上気道の粘膜に付着します。
そして、ウイルス表面にある特殊な突起ーHA突起(HA抗原)をカギのように挿し込んで、粘
膜の細胞内に侵入します。
細胞のなかで増殖して仲間を増やすと、今度は表面にあるNA突起(NA抗原)をハサミのよ
うに使って、隣の細胞に飛び出し付着して入り込んでいきます。これが繰り返されてウイルス
に侵された細胞が増えていき、インフルエンザが発症します。
お口のなかには、何百種類もの細菌が数百億も住みついています。細菌は、唾液や、歯と歯
ぐきのあいだからしみ出る体液を栄養にして増えます(食べカスを栄養源にするというのは誤
解です)。お口の病気にかかっていたり、お口の清掃が不十分だと、その数は数千億にもなっ
てしまいます。
歯の表面につくられるプラーク(歯垢)は、「バイオフィルム」といわれる細菌のかたまり
で、100%が細菌とそれがくっついたネバネバ物質からできています。歯の表面だけでな
く、歯周ポケットや舌、のどなどにもいろいろな種類の細菌がバイオフィルムとなって住みつ
いています。
それらの細菌が出す酵素は、上気道の粘膜を覆っている薄い膜を溶かしてしまいます。する
と、細胞表面のレセプター(受容体)が露出し、インフルエンザウイルスをキャッチするよう
になります。
レセプターが露出することで、HA突起やNA突起ーつまりウイルスのカギとハサミのはたら
きが助けられるので、ウイルスの感染が広がりやすくなります。また、細菌がつくる毒素は、
細胞に害を及ぼしてウイルスの侵入を許してしまいます。
だから歯みがきでお口のなかの細菌を減らす
過剰に増えた細菌は、このようにインフルエンザの感染を助けます。ですから、日ごろから
歯みがきなどでしっかりお口の清掃をし、歯科医院でお口のクリーニングしが、インフ
ルエンザ予防に大切です。ウイルスの悪い友だちになる細菌を少なくしておけば、インフルエ
ンザにかかりにくくなるわけです。
実際、デイケアに通う要介護状態の高齢者に、歯科衛生士さんが週2回お口の清掃をして、
清掃の仕方も教えてあげたところ、インフルエンザにかかった人が少なかったという研究報告
もあります。
なお、ご自分でお口のケアがしづらい高齢のかたには、歯ブラシなどが届きにくい場所のバ
イオフィルム対策に、抗菌性のある洗口液常用をおすすめします。
したがって、現在世界中で猛威を振るっている新型コロナウィルスも、お口のなかのケア
を入念に行っておけば、感染のリスクが低下するのではないでしょうか?
一部の細菌学者は、「外出後のうがいは意味がない」とおっしゃっていましたが、わたしはそ
うは思いません。外出後含嗽剤でうがいをし、更に歯ブラシを行うことによってお口のなかの
細菌を少なくすることができれば、上気道の粘膜の保護に繋がり各種ウイルスの感染
の可能性を低下させることが可能と考えています。
◎起床時は直ちに歯ブラシせよ
また外出後にかかわらず、起床時直ちに歯ブラシを行うこともおすすめしています。就寝中は
唾液の分泌が低下し、お口の中はかなりの乾燥状態です。当然お口の中の細菌数は起床時
が最も多く、ウィルスに狙われやすい状況です。コロナやインフルエンザだけでなく、風邪の
予防にも起床時の歯ブラシはおすすめです。つまり歯ブラシのタイミングは起床後、朝食後
昼食後、就寝前4回を基本と考えて下さい。何気ない日常の歯ブラシですが、この行為が
ほんの少しでも新型コロナウィルスの感染予防の低下のつながればうれしく思います。

新型コロナウィルスはいつ収束するのか
見通しは立ちません。今できることは
外出時はマスクの着用、3密を避ける
外出後はうがい、手洗い、そして歯ブラ
しの実践を追加していただき、100年
1度と言われる国難を乗り切ろうではありませんか。