定期検診(クリーニング)を前提にした「歯の修理」と「治療」てなに?

〇リスク管理を重視する歯科医院では「修理」の仕方も違ってくる   どんな病気の治療法も、日々進歩し、その変化の途上では異なる治療法が共存することがありま   す。むし歯の治療法は、現在この段階にあります。大きく二つの傾向、「リスク管理医療」とそう   でない、いわば「修理中心の医療」に分けられますが、この二つでは、むし歯の条件が同じでも軸   足の置き方が違うために、まったく異なる医療になります。   もちろんすべての歯科医は多かれ少なかれ「修理する医療」をしています。しかしリスク管理に軸   足を置いた歯科医院では、「修理」の仕方が違ってくるのです。   むし歯の初期ではとくに大きな違いがあります。修理を中心に考えると、むし歯になりそうな部分   までしっかり削ってきちっと詰めることが大切です。しかし「リスク管理医療」では、削って詰め   ることを急ぎません。悪くなったところを観察しながら、むし歯のリスク因子を調べてそれをコン   トロールし、必要であれば小さく削って小さく詰めます。このようにその場の問題解決ではなく長   い目でみた「リスク管理医療」をするのが、かかりつけ歯科医です。   むし歯に大きな穴が開いてしまった場合でも、「リスク管理」ができるかできないかで、歯の削り   方まで違ってきます。感染が歯髄(神経・血管)に近づいている場合に、かかりつけ歯科医で「リ   スク管理」が可能であば、無理に削らず、感染部分を残して殺菌して様子を見ることができます。   かかりつけ歯科医でなければ、確実に感染した象牙質を削り取る必要がありますから、神経を取る   必要がありますから、神経を取る可能性が高いでしょう。   〇普及し始めた「リスク管理医療」   歯科医院によって、このような違いがあることが、患者さんを混乱させますが、現時点では、日本   の大半の若い歯科医は、すでに修理中心の歯科医療の問題点を理解しています。しかし診療の仕方   は、「リスク管理」型になっていません。ハッキリとそのような診療姿勢に転じた歯科医院は、ま   だほんの一握りです。   この文章の筆者は、病因にターゲットを当てた「リスク管理医療」の提唱者です。ですから、   この文章の内容は日本の歯科医療の実状からすると、必ずしも平均的ではありません。   〇年齢によって治療法は変わる   歯の形や機能を回復させるための「歯の修理は」、永遠にもつわけではありません。歯を削って、   その穴にアマルガムという金属の練り物を詰めた場合には平均で6年、長くて10年。アマルガム   は色が悪く、変色、腐食が早く、まわりの組織を黒く着色させますが、同時に殺菌力があるため、   かみ合わせの部分でなければ比較的長くもちます。しかし前歯にプラスチックを詰めた場合は平均   4年という短さです。金属の鋳造でつくった「詰めもの(インレー)」や「かぶせ物(クラウ   ン)」も、むし歯の再発でダメになっています。問題なく15年もつことは滅多にありません。そ   こで治療をするときには、その処置の耐用年数を見越して先を考えた治療をする必要があります。   70歳の人であれば、やり直しがないことを前提に治療してもよいのですが、20歳の人であれ   ば、最低2回以上やり直しできるように控えめな治療をします。成長期のうちは仮の治療にとどめ   ることが望ましいでしょう。   もちろん大人になれば、その人のもつ社会的な立場や職業上の必要など、治療の基準には歯科医学   の理屈に及ばない、その患者さんの生活がありますので、歯科医は患者さんの生涯にとってよりよ   い治療を提案することができるにすぎません。残念ながら歯科医師の大学教育にも保険のしくみに   も、このような配慮はありません。穴の大きさによって治療方法を決めてしまったり、ひどい場合   には歯医者さんの得意、不得意によって、処置の仕方が決められています。   患者の年齢や生活の事情に即した治療方法を提案できるのは、かかりつけ歯科医だからこそです。