1 母の入れ歯がインプラント治療に目覚めさせてくれた

私は大学を卒業し開業するまでの10年間、一般開業医に勤務しつつ、日本大学松戸歯学部口腔外科 に非常勤として勤務していました。それと平行しインプラントに対するセミナーや勉強会等に参加 し修練を積んできました。その後、栄区桂台で開業してから、義歯でお困りの方が多いことに気が つきながらも、あまり積極的にインプラント治療を行っていませんでした。それは、週刊誌やテレ ビではネガティブな情報があまりにも多く、インプラントの説明さえ聞いていただけないことが 多々あったからです。 しかし、そんな私に大きな気づきを与えてくれたのは母でした。母は東京都の荒川区に在住のた め、地元の近所の歯医者で上下左右にわたり合計で8本の奥歯を歯周病により抜き、その後は保険で 入れ歯を作りました。 しかし、母はこの入れ歯を受け入れることができず、息子である私に相談を持ちかけてきたので す。 早速、母の入れ歯を見ると、決して悪い出来ではありません。むしろ丁寧に作ってあります。 しかし、どうしても気持ち悪いとのことで使用を拒む母に対して、本来インプラントを勧めたかっ たのですが、片道2時間の通院が困難なため、上下とも保険適用外(自由診療)の金属製の部分義 歯を作製しました。母に親孝行のつもりで心をこめて作ったものです。当然、コストもそれなりに かかります。義歯完成後、調整をかねて2週間に一度、当院までしばらくの間通院してもらいまし た。 ところが、残念なことに母は私が作製した義歯をまったく使っていません。息子の私には「快適に 使っている」と言うのです。歯科医師として20年以上のキャリアがある私には、口の中を見れば 使用していないのが、一目瞭然です。 時には、義歯の調整でわざわざ2時間かけて来院しているのに、東京の家に義歯を忘れてしまうので す。これは常時義歯を使っていない証拠なのです。 常時義歯を使用していれば、口の中にあるのですから忘れるわけではありません。どこかにポンと 置きっぱなしなのです。とてもショックでした・・・ 実の母が快適に食事ができるようにと頭を悩ませ作った義歯が使われていない、自分の実力さを実 感しつつも、義歯の限界を感じたのです。やはり義歯では天然の歯の役目は果たせないと痛感しま した。 そこでとうとう母にインプラントを8本勧めました。母も「自分の楽しみである食事にストレスがな くなるのなら」ということで受け入れてくれて、インプラント8本埋入を行いました。遠方に住んで いるためトータルで7ヶ月ほどかかってしまいましたが、今では「何でも好きな物が食べられる」と 喜んでいます。 インプラントは患者さんの生活の質をアップする治療方法ですが、生涯快適でいていただくために 定期検診を年に3~6回お願いいています。ほとんどの患者様は検診で来院されていますが、インプ ラントを行って後悔している方は今のところいないようです。皆様とお話しさせていただきます と、 「本当によく噛めて食事が楽しい」 「入れ歯のストレスから解放されて人生が変わった」 「グラグラしていた周囲の歯が最近しっかりしてきた」 などどいうお声をいただきます。 こんな患者様の声が、私がインプラント治療を徹底的に学び、臨床でも力を入れて取り組みつづけ ている理由です。今では、インプラント治療を行うことが、多くの患者様の人生を豊にすると心か ら確信しています。 もちろん、誰にとっても、どんな人にとってもインプラント治療がベストであるというわけではあ りません。症例によっては、別の治療法を提案することもありますし、費用のことも考えなくては いけません。繰り返しになりますが、大切なのは、治療について長所も短所も含めてしっかりと理 解し、あなたが望む治療を選択することです。(次号へ続く)