治療が終わってよく噛めるようになると、食べる楽しみが戻ってきて食が進みますよね。でも
これ、じつはいいことばかりではありません。高カロリー低栄養を見直さずにただ食べる量を
増やしてしまうと、むしろメタボをまねきかねないのです。
奥歯にインプラントが入ると、以前のように「よく噛めるお口」が戻ってきます。歯をなくし
てから食事のたびに味わっていた「噛めない」というストレスから解放されることは、なにも
のにも代えがたい喜びだと思います。
ただ、私が非常に気になっているのが、急激な体重の増加です。入れ歯やインプラントの治療
を終えた患者さんに、少なからず起きてくる変化だからです。私が

データを
取りはじめたのも、こうした問題を「なんとか解決したい」という気持ちからでした。
入れ歯やインプラントが入り、快適に噛めるようになった患者さんの食事指導を続けてきた経
験からつくづく感じるのは、「奥歯がないあいだに身についた食生活はなかなか頑固で、意識
して改善しないと変わらないものだ」ということです。
たいして噛まずに流し込める軟らかい食事は、歯が入っても食べやすいメニューであることに
変わりはありません。そのため、放っておくと治療後も、奥歯がなかった頃の食の好みが定着
したまま継続してしまいます。
また、噛まずに食べる癖がついていると、意識的によく噛もうとしない限り、流し込み食べも
直りません。そのため、歯が入って食が進むぶん、過食になりやすく肥満をまねきやすいので
す。せっかくなんでも食べられるようになったのですから、肉や野菜もバランスよく食べ、健
康的に体重と体組成のコントロールをしていきましょう。
知らず知らずに定着した食の好みや食習慣は、自分で気づいて改善するのはとても難しいもの
です。かといって、改善をしないとますますメタボが加速し、動脈硬化や糖尿病などを発症、
または重症化させかねません。
治療が終わって良く噛めるようになったら、それまでの食生活を見直すために、歯科医院や職
場の栄養相談を利用して管理栄養士などの専門家の指導を受け、からだにいい食生活に戻して
いきましょう。