むし歯菌について知っておこう

お口の中には、約500種類の細菌が共生しています。唾液1mlの中には1億個以上という、想像もつ かない数になっています。 これらの口腔常在菌は、一定した存在比率を保った口腔内細菌叢(口腔内フローラ)を形成してい ますが、その中には私達の健康に役立つ善玉菌もいれば、むし歯や歯周病を引き起こす悪玉菌もい ます。よく知られているのが、むし歯の原因菌の代表であるミュータンス菌(Mutans Streptococcus系)です。 ミュータンス菌は、歯の表面に付着して初めて増殖できるという特性があり、生まれたばかりの赤 ちゃんのお口の中にはまだミュータンス菌はいません。それは歯が生えていないのでミュータンス 菌が付着できないからです。 乳歯が生える生後半年頃から、親が噛み砕いた食事を与えることなどによってミュータンス菌が子 供に移ると、歯に付着して増殖します。つまり、虫歯の発生は感染症による物です。 ミュータンス菌は0.5?10μmの球状の菌体が横につながった連鎖球菌で、以下のような特徴があり ます。 1.歯面への強い付着能 菌体表層に存在するタンパク抗原(PAc)で歯面に付着する。グルコシルトランスフェラーゼ (GTF)酵素でショ糖からの粘着性の高いグルカンを産生する。 2.強い酸産生能 ショ糖、ブドウ糖、果糖から乳酸を産生する。また、環境にショ糖など豊富な場合は菌体内に多糖 体として貯蔵し、環境に糖がない場合は貯蔵しておいた多糖体から酸を産生し続ける。 3.歯面でのバイオフィルム形成能 産生したグルカンによって、口腔内の菌体を付着、増殖させデンタルプラーク(バイオフィルム) を形成する。 特に、むし歯原因菌の病原性は、食物中の糖分から非水溶性グルカンという物質を産生するところ にあります。非水溶性グルカンは粘着性が高く、きわめて固体に付着しやすい多糖体で、水に溶け ません。むし歯原因菌の存在率が高いバイオフィルムでは、それらが産生した酸が唾液などの外部 刺激によって拡散することなく、その濃度が上昇し、歯のエナメル質を溶かしてむし歯を引き起こ します。 また、口腔内のむし歯原因菌の数量とむし歯のなりやすさ(むし歯リスク)には関係があり、唾液 1mLあたりの菌数が103?106個の範囲ではむし歯のリスクの低い環境といえますが、106個を超え る場合ではむし歯のリスクの高い口腔環境であると言えます。 その他、乳酸桿菌(ラクトバチルス菌Lactobacillus)は、酸を産生する性質をもつものの、感染の 第1歩である歯面への定着性が低いため、平滑歯面におけるむし歯原因菌とは考えられていません。 ただし、エナメル質や象牙質のむし歯部分から高頻度で検出されているため、むし歯の拡大に関与 していると考えられています。